2021年、
新年のお慶びを申し上げます。
なんだか穏やかな幕開けとはならないような世の中の状況ですが、自然の力を借りて、作る喜びを生きる力に変えて、しぶとく生きていきたいなぁと糸を触りながら、眺めながら思う新年です。
日々のみなさまの喜びに少しでも役に立てることがあれば嬉しいです。
今年最初のお話しは、草木染めです。
南天染め、難を転ずる糸
2020年の終わる頃から南天で糸を染めて、新年に発売をする「難を転ずる糸」の準備をしてきました。糸を染めると良いも悪いも心が動きます。その心の動きを久々に感じたのが南天染めでした。
南天がたまたま辿り着いた家に沢山植えてあって、季節ごとに変わる葉の色、小さな白い花、そして、赤い実と毎年、なんとなく日常的に眺めていました。
2020年の秋に、南天の手まりを作ろうとコットンフレンドさんの手まり掲載企画で思いつき、それで南天で染めてみたらどうなるのだろう?と、文献を調べ、そして、自分のとても身近にあった南天で実際に染めてみました。
三方に伸びる特徴的な葉を持つ南天。薬効もあり、古くから言霊で難を転じる願掛けに応じてきた頼もしい縁起木。
草木染めあるあるで、染料を煮出す時、とても「臭い」ことが多いんですが、南天は違いました。ミントのような清涼感まではいかないのですが、スッと背筋が伸びるようなどこか不思議な、なんとも神秘的な香りが部屋中に漂いました。
その葉を鍋に入れて、少しすると、こんな色を持っていたのね、と黄色のような緑色のような色がでてきました。
生成りの糸に染み渡る南天の色は、またとても綺麗で今までみたことがない色でした。
この瞬間をみつめる自分は、本当に他人には見せたくない顔をしています。
嬉しさの半笑いと、完成までの緊張感。
ドキドキしながら、媒染を色々と試し、本当に良い、納得する色が残りました。
その後、この新年を一緒に乗り越えるきっかけにならないかと、難を転ずる糸として、南天の葉の4つの色をインスピレーションに、自分が使ってみたい糸を描いてみました。
この南天のグラデーション色は、茜の力を借りました。さすがに南天だけでは、この赤い色は出ません。茜の赤い力を借りて、さらに魔除け感の強い糸になったと思います。
どうか、みなさま、新しい新年の始まりを御守りのような糸を側に、自分自身の強さを信じてあげましょう。
高い場所は風がより強く吹いています。
新しい場所はどんな風が吹いているかわかりません。
どんな風がふいても大事なものを運んで来てくれるかもしれない、新しい香りを届けてくれるかもしれない、要らないものを持ち去ってくれるかもしれないと希望を忘れず、「しぶとく」暮らしましょう。
今年もどうか、みなさま、よろしくお願い致します。
テマリシャス
梨佳
南天の葉は採った朝すぐに染めました。
こんな静かな黄色、葉っぱ色がでます。
実験的な糸染めにも意欲的につきあってくれる染色スタッフ、N氏。楽しんで仕上げてくれました。
南天染め
南天(ナンテン)は、「難(なん)を転(てん)ずる」ことにも通じるため、日本では古くから縁起木、厄除け、魔除けとして、家の鬼門に植えられ、また生薬でも咳止めとして重宝され、人々の暮らしに寄り添ってきました。
縁起の良い南天を使い、新しい年に、健康で、清々しい素晴らしい年になるように、まるで、みなさまのお守りになればと染めあげました。南天の色味をデザインしたグラデーションをお楽しみください。
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